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ヨーガとは

 ヨーガの目的は、独存位。何物にも依存しない。何物にも左右されない。それへの道筋は、自己の本質を探求すること、そしてそれは真に自由に至ろうとする道であるといえます。また真の理(ことわり)に至ろうとする道であるともいえます。
 わたしたちは、真の自己を探求するにあたり、"こころ"というどうしようもなく自己の認識を歪めてしまうプリズムを通して探求しています。その場の状況に反応する感情や欲望や"こだわり"から成る“こころ”が本来の自分であり、それぞれの人が持つ個性だと思っています。自己を探求し自己の本質に至ろうとする過程でこのプリズムを偏光がなく、透明にして、探求し本心の在り様で生きていく。出来うる限り冷静にしかも客観的視点を涵養して自己を探求する。このような視点からの探求が、自己の本質に迫る上でも真に自由に生きる上でも最も大きな課題となります。

 それらの本質に迫り、そして真に自由に至る道は、

ギヤーナ・ヨーガ (智恵のヨーガ)
カルマ・ヨーガ (働きのヨーガ)
バクティ・ヨーガ (信仰のヨーガ)
ラージャ・ヨーガ (本能的性質の克服のヨーガ)

 本質に至る切り口が幾世代にも亘り行者から行者へと探求され、4つの道として、これらのヨーガに結実されました。4つのヨーガの行を重ね、それぞれの人が最も得意とするヨーガを以て本質に迫っていきます。
 これらのヨーガの道は、5000年に亘るヨーガ行者たちの智恵と方法が純化されたものであります。
詳しくは、http://yoganiketan.jp/aboutyoga200801.htmlを参照ください。

ヨーガ療法とは

 伝統的ヨーガは、苦悩の本質を、
「人間は真の自己ならざるものを真我と見誤るがゆえに苦悩する。」
と捉えている。
そして、そのことが、心と体の不調の原因であり病気の原因である。

 ヨーガ療法は、5000年に亘る自己の本質の探求法とその産物であるヨーガの智恵(切り口)を持って、この見誤った結果としての苦悩と病から自らを解放するためのアプローチを提供します。
  タイッテリア・ウパニシャッドに記されている人間5蔵説(パンチャ・コーシャ)と言われるヨーガの人間構造論(切り口)を基に、自己(こころと言われるもの)を分析していきます。我々の肉体の次元から、生気(プラーナ)の次元、感覚器官・運動器官の次元、理性的判断の次元、通常の記憶や心の奥に刻み込まれた意識下の記憶の次元、そして自己存在の次元まで、実習者自らがそれぞれの次元に意識を向けそして分析し・気づきを獲得するための行法(訓練)をしていきます。これらの気づきを得る訓練過程が、伝統的ヨーガの行法(方法論)によって為され、それがヨーガ療法の一連の手法の母体の入り口となっているのであります。
 この一連の手法は、現代の最先端の技術と研究によって、特に脳、自律神経系、内分泌系、免疫系等に作用することが明らかとなりつつあります。そして、アーサナ(体操)によるソマトサイキック・アプローチ、ヨーガの聖典等に基づいた瞑想、ヨーガ・カウンセリングなどの整理されたサイコ・エデュケーションの手法が、各次元に働きかけます。それらは、認知の歪みへの気づき、行動の変容、自己存在の確信をも促していきます。その結果として、家庭や組織や社会の中での自己存在の親和・人間関係の変容・社会関係の改善も認められるようになります。ヨーガ療法の実践により、教育的・社会的効果が期待されます。
 ヨーガ療法は、身体にもアプローチしますが、身体を通じて心へのアプローチを最も得意としているのです。そして、人としての成長をも促していく全人的(physical, mental, social, and spiritual)な健康を実現する可能性を持った療法であります。
 詳しくは、http://www.yogatherapy.jp/aboutyt2008.htmlを参照下さい。

統合医療の中で

 患者中心の医療、一生(誕生から死の真際まで)をケアする包括的な医療を目的とする統合医療の考えの中で、ヨーガ療法は統合医療の理想を実現する療法の中の1つであると確信しております。
 統合医療というオーケストラの中で、伝統医学や相補・代替医療そして近代西洋医学を熟知した医師をオーケストラの指揮者とし、我々療法士(ヨーガ)を含む各種の統合医療療法士たちや近代西洋医学や先端医学がオーケストラの各種楽器のパートを担い、最もふさわしい組み合わせでもって病に立ち向う。統合医療のイメージはこのようなものになるでしょう。

 我々認定療法士(ヨーガ)の持ち味は、心と体の相関にかかわる疾患群についてのアプローチです。近代西洋医学のみでは十分なアプローチが得られない疾患群に対して、豊富な手段と方法論とを5000年の間受け継がれてきた伝統的ヨーガの行法の中に今新たに見出し、それらの確かな手ごたえを確信しております。そしてそれらの技法の効果が、生体内の働きを探る新進の検査機器の発明・進化によって、また我々の新たな取り組みによって、明らかとなりつつあります。

 2012年4月から1年間わたって、厚生労働省において"「統合医療」のあり方に関する検討会議"において統合医療の捉え方について 『近代西洋医学を前提として、これに相補・代替医療や伝統的医療を組み合わせて更に、QOL(Quality of life:生活の質)を向上させる医療であり、医師主導で行うものであって、場合によってより多職種が協同して行うもの』 と位置付けています。

 検討会議では、近代西洋医学と組み合わせる療法の範囲について、エビデンスの程度や有害性の如何に関わらず、あらゆる療法の有効性だけでなく安全性に関する知見の集積状況も踏まえながら、療法の範囲について整理していく必要があるとの見解を打ち出しました。
これらの検討の中でヨーガは、近代西洋医学との組み合わせの中の療法の分類の中で"身体の動作にともなう療法"との位置づけで分類されています。
 ただ、この検討会議時点の調査研究報告中には、コクランライブラリー(2008年〜2011年の4年間の調査)によるヨーガの報告は1件しかなく、その有効性についてはいまだ未知数(未科学)といった状態です。今後、ヨーガ療法によるRCT等大学及び研究機関による治験の報告が期待されます。
 尚、(社)日本ヨーガ療法学会に於いては、ヨーガ療法の研究活動につき下記のように支援をしています。
 研究活動支援公募のご案内と申請書: http://www.yogatherapy.jp/#ken
(平成25年2月: 厚生労働省「統合医療」のあり方に関する検討会、"これまでの議論の整理"参考)

 このような厚生労働省内での統合医療検討会議の一年間にわたる議論される同じ時期に、平成24年度からの九州大学医学部心身医学講座による厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究として、「ストレス関連疾患に対する統合医療の有用性と科学的根拠の確立に関する研究」 には、ヨーガ療法による慢性疲労症候群におけるランダム比較試験、ヨーガ療法による有害事象の大規模調査研究、ヨーガ行法の介入による効果面における文献研究等々に有用な結果が出つつあります。また、これらの報告は、現代医学的治療と自律訓練法、ヨーガ療法の併用療法を例とした「統合医療ガイドライン」と「利用マニュアル」を作成し、統合医療に関する政策に対しても提言をまとめる予定とのことである。
 我々ヨーガ療法士は、ヨーガと言われる中でも、様々な目的をもったものがあり、それらを一律に医学的効果を求める研究対象とするには、問題があるように思っている。ヨーガに求めるものが単なる運動であるとか、柔軟性であるとか、美容であるとか、あるいは他者との比較において優越性を促すものとか。そのような目的であれば、その目的で完結すればよいと思う。あくまで、ヨーガ療法とは、伝統的ヨーガが行う自分自身で“こころ”と“からだ”をコントロールしていくという、単に外側から見るだけでは決して理解出来ない内面への様々なアプローチがある。私たちの体に具わっているものすべてを使った心へのアプローチという伝統的ヨーガ行法の中から、心身に有効なものを学び、且つ新たなものを見出すという事にあるように思われる。

第三世代の認知行動療法の中で

 MBSR(マインドフルネス・ストレス低減法)、MBCT(マインドフルネス認知療法)、最近第三新世代の認知行動療法として心身医学・臨床心理の場で話題となりつつあります。これらの方法について伝統的ヨーガの側面から一言。
 マインドフルネスとは、今のこの瞬間に意識を向けること。瞑想の方法としてわかりやすいテーラーワーダ仏教の修行法の実践者から医療への応用が為されて、実に切れ味のよい効果をもたらしている。
 伝統的ヨーガの修行法の中で、マインドフルネスの位置付けは、ラージャ・ヨーガ(ヨーガの八支則)の中の制感の導入部分の修行法である。心を探っていく前にまず第一にやっておくべき意識のスタンス(注意の向け方)。それは、我々が生かされている今のこの瞬間に意識を留め、メタ認知的な意識を涵養する訓練である。我々が真に生き、行動し、思考し、気付けるのは、過去や未来ではなく今のこの瞬間しかないからだ。意識して今のこの瞬間に意識をもって来ない場合には、無自覚の状態で反芻思考や自動化された思考や行動パターンの罠に落ち込んでしまうからである。そこには、新たな発見も気づきもなく、意図された活動ではなく自動化された脳神経ネットワークが、ただ反応しているだけである。そこには意志は介在していない、人間として目覚めた状態で能動的に生きているとは言えない。
 伝統的ヨーガの修行法の出発点としてまず意識化(マインドフルネス)の訓練から始める。そして、今のこの瞬間の体や心をそして過去の記憶を冷静にしかも客観的な視点を涵養して観る、そして新たな気付きを得ていく。すなわち心を偏りのないニュートラルな状態にして囚われのない立ち位置(客観的視点)で、感情や情動の連鎖を調べる。自らの譲れないこだわりや思い込みなどが心の反応の原因であると気づき認知の修正を自ら学習するのである。伝統的ヨーガは、自ら修行していくための心理学、すなわち1人称の心理学といえるだろう。MBSR、MBCTなどのマインドフルネスによる気付きのプロセスが第三世代と言われる認知行動療法といわれる手法を生み出す所以であろう。訓練により修行により、この今を生きる姿勢が深められると、囚われの原因が何であるかが解り、人生がいかに豊かなものであるかということに気づかされるのである。これらは、古より伝えられる悟り(気づき)のため方法論、師匠の導きによる修行法の体系の一部であるが、第三世代の認知行動療法にとって有効な介入手段を伝統的ヨーガの行法が、いかに豊富に持ち合わせているかという事を示している。今後の研究が期待される。今のこの瞬間を目覚めて生きる、この方法論(伝統的ヨーガ)が、私たちの生き方を変えていく。マインドフルネスは、1人称の心理学として、自らの修行体系の場でその威力が発揮されるのではないかと思われる。

 余談: テーラーワーダ仏教はお釈迦さんが修行をされたその修行方法を現代でも実践しているといわれる仏教です。日本の大乗仏教とは異なります。お釈迦さんは、アーラーラ・カーラーマ、ウッダカ・ラーマプッタの二人のヨーガ行者さんからヨーガの修行方法を習って修行を完成されたとのことです。伝統的ヨーガからみるとお釈迦さんも修行を極めたヨーガ行者さんの中の一人という事になります。(大パリニッバーナ経【岩波文庫】には、お釈迦さんの修行のやり方の一部が出ていますが、その部分は伝統的ヨーガの修行法そのものの様に感じられます。)